はじめに

連結財務諸表は、親会社と子会社の個別財務諸表を合算して作成します。しかし、各社が別々に会計方針を決めている結果、同じような取引でも会社ごとに処理が異なることがあります。たとえば固定資産の減価償却方法が、親会社は定額法、子会社は定率法といったケースです。

このまま合算すると、企業集団としての財政状態・経営成績が整合的に表示されず、利害関係者の判断を誤らせかねません。そこで連結では「会計方針の統一」が求められます。

本記事では、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」に基づき、連結における会計方針の統一の原則、より合理的な方針の選択、統一が困難な場合の取扱いを、実務の判断手順に沿って解説します。

概要

会計方針の統一は、次の流れで判断します。

1. 親子会社で会計処理が異なる項目を洗い出す
    ↓
2. 「同一環境下・同一性質の取引等」か判定(第17項)
    ↓ Yes
3. より合理的な会計方針を選択(第58項)
    ↓
4. 連結手続上の修正として処理を揃える
    ↓
(同一環境・同一性質でない/統一が事実上困難な場合は別途検討)

統一の対象は、減価償却方法、棚卸資産の評価方法、引当金の計上基準、収益認識のタイミングなど、会計方針として選択の余地がある項目全般です。この論点は連結特有のものであり、各社の個別財務諸表はそれぞれの会計方針で適正に作成されている前提のもとで、「連結という一体の財務諸表に合算する段階で揃える」という位置づけになります。

統一の検討対象となりやすい項目

項目

親子で分かれやすい選択肢の例

減価償却方法

定額法/定率法、耐用年数の見積り

棚卸資産の評価方法

総平均法/移動平均法/先入先出法

貸倒引当金の計上基準

貸倒実績率の算定方法、個別評価の基準

退職給付の計算前提

割引率・期間帰属の方法(簡便法/原則法)

収益認識

出荷基準/検収基準 等の認識時点

これらの項目について親子で処理が異なる場合に、第17項の「同一環境・同一性質」要件に照らして統一の要否を判断していきます。

具体的な会計処理

統一の原則(第17項)

第17項は、「同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計処理の原則及び手続は、原則として統一する」と定めています。

ここで重要なのは2つの要件です。

要件

意味

同一環境下

取引が行われる事業環境・市場・制度等が同じであること

同一の性質の取引等

取引や事象の経済的実質が同じであること

この2つを満たす取引等については、親子で処理が違っていれば連結上揃える、というのが原則です。逆に、事業環境が異なる(たとえば規制・商慣行が大きく異なる海外市場)場合や、取引の性質が異なる場合には、統一を要しないこともあります。

たとえば、国内親会社と国内子会社が同じ製品を同じ市場で販売しているのに、棚卸資産の評価方法が異なるのであれば、これは「同一環境・同一性質」に該当し、統一の対象となります。一方、規制環境や事業内容が大きく異なる海外子会社の特定の取引については、必ずしも国内親会社と同一の処理に揃える必要があるとは限らず、要件該当性を個別に判断します。

このように、第17項は「すべての会計処理を機械的に揃える」ことを求めているのではなく、あくまで「同一環境・同一性質の取引等」に絞って統一を求めている点が、実務上の出発点になります。

より合理的な会計方針の選択(第58項)

統一というと「子会社を親会社に合わせる」とイメージされがちですが、第58項は、会計処理の統一にあたっては「より合理的な会計方針を選択すべき」であり、子会社の会計処理を親会社に合わせる場合だけでなく、親会社の会計処理を子会社の会計処理に合わせることもあり得る、という趣旨を示しています。

つまり、統一の方向は機械的に親会社優先ではなく、その取引等の実態をより適切に表す方針はどちらか、という観点で決めます。

統一の方向

採用される場面の例

子会社を親会社に合わせる

親会社の方針がグループ実態をより適切に表す場合

親会社を子会社に合わせる

子会社の方針の方が取引実態をより適切に表す場合

統一の方向を判断するうえでは、「グループとしてその取引をどう捉えるのが最も実態に合うか」という視点が出発点になります。たとえば、親会社が長年定額法を採用し、グループの設備投資の収益貢献が期間にわたり平準的だと考えられるのであれば、子会社の定率法を定額法に揃える方が合理的かもしれません。逆に、子会社が事業の主力であり、その業態において定率法が広く採用され実態をよりよく表しているのであれば、親会社側を子会社に合わせる選択もあり得ます。重要なのは「親会社だから優先」という形式ではなく、第58項が示す「より合理的か」という実質判断です。

統一は連結修正として行う

会計方針の統一は、連結手続上の修正仕訳として行います。子会社が提出する個別財務諸表(正規の決算)そのものを書き換えるのではなく、連結精算表上で親会社方針(または選択した合理的方針)に引き直します。

連結修正として行う理由は、子会社の個別財務諸表は子会社自身の会計方針のもとで適正に作成されており、これを書き換えること自体は連結の目的ではないからです。連結が目的とするのは、あくまで「企業集団を一体として表示するために、合算段階で処理を揃える」ことです。したがって、統一は連結精算表(連結ワークシート)上での修正として完結し、子会社の帳簿には影響しません。

:子会社が定率法で計上した当期減価償却費が1,200万円、連結上は定額法に統一すると当期償却費は900万円となる場合。差額300万円だけ費用を減らし、減価償却累計額を取り消す連結修正を行う。

(借方)減価償却累計額  3,000,000  (貸方)減価償却費  3,000,000
  ※ 子会社(定率法)→ 連結方針(定額法)への統一に伴う当期差額の修正

なお、過年度から累積している差額がある場合には、当期分の損益修正に加えて、期首利益剰余金(過年度累計分)の修正も合わせて行います。

過年度累計分を含む統一修正のイメージ:前期末までの累積差額(定率法−定額法)が800万円ある場合、期首時点の修正を先に入れたうえで当期分を調整します。

〔期首(過年度累計分)の修正〕
(借方)減価償却累計額  8,000,000  (貸方)利益剰余金期首残高  8,000,000

〔当期分の修正〕
(借方)減価償却累計額  3,000,000  (貸方)減価償却費  3,000,000
  ※ 連結修正は毎期累積するため、開始仕訳として過年度分を引き継ぐ

連結修正は個別帳簿に残らないため、翌期も同じ修正を「開始仕訳」として引き継ぐ必要があります。統一に伴う修正額を年度ごとに管理し、累積残高を追えるようにしておくことが実務上重要です。

統一が困難な場合の考え方

実務では、子会社(特に在外子会社)の制度上の制約等により、親会社と完全に同一の会計方針へ統一することが事実上困難な場合があります。このような場合でも、第17項の趣旨は「同一環境・同一性質の取引等」の統一にあるため、まずは対象取引が本当に「同一環境・同一性質」かを再確認します。

環境・性質が異なるために統一を要しないと整理できる場合は、無理に揃える必要はありません。一方、本来統一すべきものが事務負担等の理由で揃っていない場合は、重要性を踏まえつつ連結修正で対応するのが原則です。

判断の流れを整理すると、次のようになります。

ステップ

判断

1

親子で会計処理が異なるか → 異ならなければ統一不要

2

同一環境・同一性質の取引等か(第17項)→ 該当しなければ統一を要しない

3

該当する場合、より合理的な方針はどちらか(第58項)

4

選択した方針に連結修正で揃える(重要性も考慮)

このうち、ステップ2の「同一環境・同一性質」の判定が実務上の肝になります。安易に「揃えなくてよい」と結論づけず、なぜ統一を要しないと判断したのかを根拠とともに整理しておくことが、監査対応上も有効です。

留意点

  • 重要性の考慮:統一による連結財務諸表への影響に重要性が乏しい場合は、実務上の対応に幅が生じ得る。ただし「面倒だから」を理由に重要な不統一を放置しない
  • 継続性:いったん選択した統一方針(どの方針に揃えるか)は継続して適用する(第12項)。みだりな変更は認められない
  • 税効果への波及:会計方針の統一に伴う連結修正は、個別上の簿価と連結上の簿価に差を生じさせ、一時差異が発生する。連結特有の税効果会計の検討が必要
  • 在外子会社の取扱い:在外子会社が指定国際会計基準・米国会計基準等で作成している場合、一定の項目について当面の取扱いが別途定められていることがあるため、適用指針等も併せて確認する
  • 手続の整備:統一対象項目(減価償却方法・棚卸資産評価・引当金基準等)をグループ会計方針として明文化し、子会社からの報告フォーマットに織り込むと、毎期の統一作業が安定する
  • 開始仕訳の引継ぎ:連結修正は個別帳簿に残らないため、統一に伴う累積修正額を翌期以降も開始仕訳として正確に引き継ぐ。引継ぎ漏れは利益剰余金の誤りに直結する
  • 新規子会社の取込み時:新たに連結に加わる子会社については、初年度に会計方針の差異を洗い出し、統一対象を確定させる。取込み後に差異が判明すると過年度修正の論点が生じる

会計方針の統一は、一見地味な論点ですが、減価償却方法や棚卸資産評価のように損益に直接効く項目が含まれるため、連結利益への影響が大きくなることがあります。グループ各社の会計方針を一覧化し、差異の有無と統一要否を毎期点検する体制を整えることが、統一作業を安定させる近道です。

まとめ

連結における会計方針の統一を整理すると、次のとおりです。

論点

取扱い(根拠)

統一の原則

同一環境下・同一性質の取引等は原則統一(第17項)

統一の方向

より合理的な会計方針を選択(親→子もあり得る)(第58項)

統一の方法

連結手続上の修正(個別財務諸表は変更しない)

統一を要しない場合

同一環境・同一性質でない取引等

継続性

いったん選んだ方針は継続適用(第12項)

ポイントは、「揃えるのは同一環境・同一性質の取引等」「揃える先はより合理的な方針」「揃え方は連結修正」という3点です。まずは親子会社で処理が異なる項目を洗い出し、それぞれが統一すべき取引かどうかを判定するところから着手してみてください。