はじめに

資本連結とは、親会社の子会社に対する投資(子会社株式)と、それに対応する子会社の資本(純資産)を相殺消去する一連の手続です。連結財務諸表では子会社の資産・負債・純資産をそのまま合算するため、合算したままでは「親会社が保有する子会社株式」と「子会社の純資産」が二重に計上されてしまいます。この二重計上を解消するのが資本連結です。

資本連結は、子会社資産・負債の時価評価、投資と資本の相殺、のれん・非支配株主持分の算定という複数の手続が連動するため、連結会計のなかでも難所とされます。本記事では、企業会計基準第22号に基づき、支配獲得日の処理から翌期以降の開始仕訳までを仕訳例とともに解説します。

概要

資本連結(支配獲得日)の手続は、次の流れで進みます。

1. 子会社の資産・負債を支配獲得日の時価で評価(全面時価評価法)
    ↓
2. 時価と簿価の差額を「評価差額」として子会社資本に加減
    ↓
3. 評価替後の子会社資本を、親会社持分と非支配株主持分に按分
    ↓
4. 親会社の投資(子会社株式)と親会社持分相当の子会社資本を相殺消去
    ↓
5. 相殺差額を「のれん」または「負ののれん」として計上
    ↓
6. 非支配株主に帰属する子会社資本を「非支配株主持分」として計上
    ↓
(翌期以降)開始仕訳で前期末の連結修正を引き継ぐ

具体的な会計処理

ステップ1:子会社の資産・負債を時価評価する(評価差額)

第20項は、連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価すると定めています(全面時価評価法)。

第21項は、子会社の資産及び負債の時価による評価額と、当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額(簿価)との差額(評価差額)を、子会社の資本とすると定めています。なお第22項により、評価差額に重要性が乏しい子会社の資産及び負債は、個別貸借対照表上の金額(簿価)によることができます。

仕訳例(評価差額の計上):子会社が保有する土地の簿価が3,000,000円、支配獲得日の時価が4,000,000円の場合

(借方)土地        1,000,000   (貸方)評価差額        1,000,000

この「評価差額」は、以降の手続では子会社の資本の一部として扱います。

ステップ2:評価替後の子会社資本を按分する

時価評価により計上した評価差額を加減した後の子会社資本を、親会社持分と非支配株主持分に按分します。

前提:親会社P社が子会社S社の株式80%を3,800,000円で取得し支配を獲得。

評価替後のS社の資本:

項目

金額

資本金

2,000,000

利益剰余金

1,000,000

評価差額

1,000,000

子会社資本 合計

4,000,000

按分:

区分

計算

金額

親会社持分(80%)

4,000,000 × 80%

3,200,000

非支配株主持分(20%)

4,000,000 × 20%

800,000

ステップ3:投資と資本を相殺消去し、のれんを算定する

第23項は、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本は相殺消去すると定めています。

第24項は、親会社の子会社に対する投資と、これに対応する子会社の資本との相殺消去にあたり差額が生じる場合には、当該差額をのれん(又は負ののれん)とすると定めています。

のれんの算定

親会社の投資(子会社株式)        3,800,000
− 親会社持分相当の子会社資本      3,200,000
= のれん(借方差額)              600,000

投資額が親会社持分相当の子会社資本を上回る場合は「のれん」(借方)、下回る場合は「負ののれん」(貸方)となります。負ののれんが生じる場合は、原則として発生した期の利益(特別利益)として処理します。

ステップ4:資本連結の相殺消去仕訳(開始仕訳の本体)

ステップ2・3を一つの仕訳にまとめると、支配獲得日の資本連結仕訳は次のとおりです。

仕訳例(投資と資本の相殺消去)

(借方)資本金          2,000,000   (貸方)子会社株式      3,800,000
(借方)利益剰余金      1,000,000   (貸方)非支配株主持分    800,000
(借方)評価差額        1,000,000
(借方)のれん            600,000
                                    (貸借合計 4,600,000)

借方に子会社の資本(資本金・利益剰余金・評価差額)とのれん、貸方に親会社の投資(子会社株式)と非支配株主持分を計上し、両者を相殺します。

ステップ5:非支配株主持分を確定する

第26項は、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は、非支配株主持分とすると定めています。上記の例では、評価替後の子会社資本4,000,000円のうち非支配株主に帰属する20%=800,000円が非支配株主持分となります。

なお、第27項により、子会社の欠損のうち当該子会社に係る非支配株主持分に割り当てられる額が非支配株主持分を超える場合、その超過額は親会社の持分に負担させる取扱いがあります。

ステップ6:のれんの償却と翌期以降の開始仕訳

計上したのれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法等の合理的な方法により規則的に償却します。

仕訳例(のれんの償却・効果の及ぶ期間を10年とした場合)

(借方)のれん償却額        60,000   (貸方)のれん        60,000

また、資本連結の修正は連結精算表上の処理であり個別帳簿には記帳されないため、翌期の連結では前期末までの連結修正をまとめて再現する「開始仕訳」が必要です。開始仕訳では、前期に計上した相殺消去・のれん償却・利益の按分等を、過年度分は利益剰余金(期首残高)に集約して引き継ぎます。

留意点

  • 全面時価評価法:評価差額は子会社の資産・負債すべてについて時価評価して算定する。親会社持分相当のみを時価評価する方法(部分時価評価法)は現行基準では採用しない
  • 評価差額の重要性:第22項により重要性が乏しければ簿価によることができるが、土地・有価証券等の含み損益が大きい資産は時価評価の要否を慎重に判断する
  • のれんの償却と減損:のれんは規則的償却の対象であると同時に、減損の兆候があれば減損会計の対象となる。償却期間の設定根拠を文書化しておく
  • 追加取得・一部売却:支配獲得後に子会社株式を追加取得・一部売却した場合は、第28項・第29項に従い資本剰余金で処理する(持分変動)。支配が継続する限り損益は計上しない
  • 開始仕訳の累積:連結年数が経過するほど開始仕訳は複雑化する。資本連結の各構成要素(評価差額・のれん・利益剰余金の按分・非支配株主持分の増減)を連結ワークシートで継続管理することが実務上不可欠

まとめ

資本連結の手続を整理すると、以下のとおりです。

ステップ

処理内容

根拠

1. 時価評価

子会社資産・負債を支配獲得日の時価で評価し評価差額を計上

第20・21・22項

2. 資本按分

評価替後の子会社資本を親会社持分と非支配株主持分に按分

第26項

3. 相殺消去

投資(子会社株式)と親会社持分相当の子会社資本を相殺

第23項

4. のれん算定

相殺差額をのれん/負ののれんとして計上

第24項

5. 非支配株主持分

親会社に帰属しない子会社資本を非支配株主持分に

第26項

6. 開始仕訳

翌期以降は前期末の連結修正を引き継ぐ

資本連結は「時価評価 → 資本按分 → 相殺 → のれん・非支配株主持分」という骨格を押さえ、各構成要素を連結ワークシートで管理すれば見通しよく処理できます。まずは支配獲得日の子会社の純資産と取得原価を整理し、評価差額とのれんを算定するところから始めてみてください。