はじめに
連結の対象は、親会社が直接株式を保有する子会社だけではありません。子会社がさらに別の会社の株式を保有している場合、その会社(孫会社)も企業集団の一員として連結の範囲に含まれることがあります。
このとき重要になるのが「間接所有」の考え方です。親会社が孫会社の株式を直接1株も持っていなくても、子会社を通じて実質的に支配していれば、孫会社は連結子会社となります。わが国の連結会計は、形式的な持株比率ではなく「意思決定機関を支配しているか」という実質に着目する支配力基準を採用しており(第7項)、この基準のもとでは間接保有の判定が不可欠となります。
子会社・孫会社が多層的に連なる企業集団では、誰が何を何%保有しているかを正確に把握しないと、連結の範囲も非支配株主持分の金額も誤ってしまいます。本記事では、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」に基づき、間接保有を含めた支配の判定と、孫会社の資本連結手続を設例で解説します。
概要
孫会社・間接所有の連結は、次の流れで進みます。
1. 直接保有+間接保有を合算して支配を判定(第7項)
↓
2. 連結の範囲に孫会社を含める(第13項)
↓
3. 孫会社の資産・負債を支配獲得日時価で評価(第20項)
↓
4. 段階的に資本連結:孫会社 → 子会社の順に投資と資本を相殺(第23項)
↓
5. 各段階で非支配株主持分を按分(第26項)
↓
6. 連結財務諸表に集約
ポイントは、(1) 支配の判定では直接・間接の保有を合算すること、(2) 資本連結の手続は孫会社から先に処理し、子会社、親会社へと積み上げることの2点です。
具体的な会計処理
直接・間接保有を合算して支配を判定する(第7項)
「親会社」とは、他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支配している企業をいい(第6項)、「他の企業の意思決定機関を支配している企業」には、自己の計算において所有している議決権が過半数を占める企業等が含まれます(第7項)。
ここでいう議決権には、親会社が直接所有する議決権だけでなく、子会社を通じて間接に所有する議決権も含めて判定します。これが支配力基準の中核です。
設例(支配判定):
- 親会社Pは子会社Sの議決権の80%を直接保有
- 子会社Sは孫会社候補Gの議決権の70%を保有
この場合、Sが70%を保有してGを支配しており、PはそのSを支配しているため、Gは企業集団の支配下にあると判定され、連結子会社(孫会社)となります。親会社Pはすべての子会社(孫会社を含む)を原則として連結の範囲に含めます(第13項)。なお、議決権の所有割合が100分の40以上100分の50以下であっても、緊密者・同意者と合わせて過半数を占める場合などには支配が認められることがあり(第7項(2))、間接保有の判定でもこうした実質的な支配関係を含めて検討します。
間接保有の応用パターン:支配の判定では、次のようなケースも実質支配として捉えます。
パターン | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
親会社が直接保有なし | 子会社経由で過半数を間接保有 | 孫会社として連結 |
直接+間接の合算 | 親会社が直接30%・子会社経由で30% | 合算60%で連結 |
複数子会社経由 | 複数の子会社が分散保有し合算で過半数 | 各経路を合算して判定 |
子会社及び関連会社の範囲の決定にあたっては、企業会計基準適用指針第22号も参照します(第3項(3))。
間接保有比率を計算する
連結上の持分の按分には、親会社に帰属する実質的な持分比率(間接保有比率)を用います。間接保有比率は、各層の持分比率を掛け合わせて求めます。
区分 | 計算 | 比率 |
|---|---|---|
PのSに対する持分 | 直接 | 80% |
SのGに対する持分 | 直接 | 70% |
PのGに対する実質持分(間接保有比率) | 80% × 70% | 56% |
Gに対する非支配株主持分(合計) | 100% − 56% | 44% |
ここで重要なのは、Gの非支配株主持分44%は、(1) Gの直接の非支配株主(30%)と、(2) Sの非支配株主が間接的に有するG持分(Sの20% × Gの70% = 14%)の合計として構成される点です。連結上はこれらを合算してGの非支配株主持分とします(第26項)。
Gの持分の内訳:
帰属先 | 計算 | 比率 |
|---|---|---|
親会社P(実質持分) | 80% × 70% | 56% |
Gの直接の非支配株主 | (SのG保有30%の外部分) | 30% |
Sの非支配株主が間接に有する分 | 20% × 70% | 14% |
合計 | — | 100% |
このように、孫会社の非支配株主持分は単純に「100%−直接保有比率」ではなく、中間子会社の非支配株主が間接的に有する部分を含めて計算します。間接保有の連結で計算を誤りやすい最大のポイントがここにあります。
段階的に資本連結を行う(孫会社 → 子会社)
孫会社の資本連結は、まず孫会社Gをその直接の親であるSの連結として処理し、次にSをPの連結として処理する、という段階的な手順で進めます。各段階で投資と資本の相殺消去(第23項)を行い、差額をのれん(又は負ののれん)とし(第24項)、親会社に帰属しない部分を非支配株主持分とします(第26項)。
設例(資本連結):支配獲得日の時価評価後の資本を、S=1,000、G=500とする。SのG株式(投資)は400、PのS株式(投資)は900とする。
第1段階:孫会社Gの資本とSの投資を相殺
- Gに対するS持分:500 × 70% = 350
- Gの非支配株主持分(直接の30%分):500 × 30% = 150
- のれん:投資400 − S持分350 = 50
(借方)G資本(資本金・利益剰余金等) 500 (貸方)S保有のG株式(投資) 400
(借方)のれん 50 (貸方)非支配株主持分 150
第2段階:子会社Sの資本とPの投資を相殺
S単体の資本に、第1段階で取り込んだG分の持分(S帰属分)を含めたうえで、PのS持分80%と相殺します。
- Sに対するP持分:S資本1,000 × 80% = 800
- Sの非支配株主持分:1,000 × 20% = 200
- のれん:投資900 − P持分800 = 100
(借方)S資本(資本金・利益剰余金等) 1,000 (貸方)P保有のS株式(投資) 900
(借方)のれん 100 (貸方)非支配株主持分 200
この結果、Gに対する非支配株主持分は、Gの直接非支配株主分150に、Sの非支配株主が間接に有する分が加わる形で連結上に反映されます。
段階連結のイメージ:
【第1段階】S(親)とG(子)の関係を連結
SのG投資400 ⇔ Gの資本500のうちS持分350 → のれん50、非支配株主持分150
【第2段階】P(親)とS(子)の関係を連結
PのS投資900 ⇔ Sの資本1,000のうちP持分800 → のれん100、非支配株主持分200
【集約】PからみたGの実質持分56%、Gの非支配株主持分44%が連結B/Sに反映
このように、下層(孫会社)から順に投資と資本を相殺し、上層(子会社)の連結に積み上げていくことで、最終的に親会社からみた実質持分と、各層の非支配株主持分が漏れなく連結財務諸表に集約されます。処理の順序を逆にすると、中間子会社の資本に孫会社分が正しく反映されず、のれんや非支配株主持分の金額がずれてしまいます。
子会社相互間の投資の相殺
子会社相互間の投資(例:子会社Sが別の子会社の株式を保有)とこれに対応する他の子会社の資本も、親会社の子会社に対する投資と資本の相殺消去(第23項・第24項)に準じて相殺消去します(第25項)。上記設例の第1段階(SのG株式とGの資本の相殺)は、まさにこの子会社相互間(中間子会社と孫会社の間)の投資と資本の相殺に該当します。間接所有の連結ではこの相殺が頻出するため、保有関係図を作成して整理すると確実です。
また、連結会社相互間の債権債務(第31項)や取引(第35項)、未実現損益(第36項)の相殺消去も、孫会社を含む企業集団全体で行います。孫会社が中間子会社や親会社と取引している場合には、これらの相殺・消去も忘れずに実施する必要があります。
留意点
- 支配判定は議決権の合算で:直接保有だけで過半数に満たなくても、間接保有を合算して支配が認められれば連結子会社となる(第7項の支配力基準)。形式的な直接保有比率だけで判断しない
- 間接保有比率は掛け算:親会社の実質持分は各層の持分比率の積で求める(上例 80%×70%=56%)。のれんや非支配株主持分の按分はこの実質持分に基づく
- 非支配株主持分は合算:孫会社の非支配株主持分は、孫会社の直接非支配株主分と、中間子会社の非支配株主が間接に有する分の合計となる(第26項)
- 処理順序は孫会社から:資本連結は孫会社→子会社の順に積み上げる。順序を誤ると持分やのれんの計算がずれる
- 実務指針を参照:株式の間接所有に係る資本連結手続の詳細は、移管指針第5号「株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針」を参照する(第3項(5))。複雑な保有構造では同指針の設例に沿って確認する。また資本連結手続全般は移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」も参照する(第3項(4))
- 持分比率の異動に注意:孫会社の支配獲得日が中間子会社の支配獲得日と異なる場合(例:先に子会社化し、後に孫会社を取得)、それぞれの支配獲得日の時価評価とのれん認識を別々に行う
- 欠損の取扱い:孫会社に欠損が生じ、非支配株主持分に割り当てる額が当該非支配株主の負担すべき額を超える場合の取扱い(第27項)も、間接保有の各層で検討が必要となる
- 損益の按分も間接保有比率で:支配獲得日後に生じた孫会社の損益のうち非支配株主に帰属する部分の按分も、間接保有比率を踏まえて行う(第26項関連)
まとめ
孫会社・間接所有の連結を整理すると、次のとおりです。
ステップ | 内容 |
|---|---|
1. 支配判定 | 直接+間接の議決権を合算して実質支配を判定(第7項) |
2. 範囲決定 | 支配下の孫会社を連結の範囲に含める(第13項) |
3. 時価評価 | 孫会社の資産・負債を支配獲得日時価で評価(第20項) |
4. 段階連結 | 孫会社→子会社の順に投資と資本を相殺(第23項・第24項) |
5. 持分按分 | 間接保有比率に基づき非支配株主持分を按分・合算(第26項) |
間接所有の連結は、「支配の判定は議決権を合算」「持分の按分は比率を掛け算」「資本連結は孫会社から積み上げる」という3点を押さえれば、複雑な保有構造でも一貫して処理できます。まずは資本関係図を描き、各層の持分比率を明確にするところから始めてください。